農★blog - 2009/03/21のエントリ
北海道南西部にある農村のスーパーで、珍しい光景を目にしました。「珍しい」とはいっても、「都会で暮らす者にとっては」という注釈をいちおう付けておきますけれども、それが写真にある「野菜の対面販売」。一般的にスーパーといえば、セルフ販売が基本で、対面販売のコーナーがあったとしてもほとんどは魚介や惣菜ぐらい。それに、対面販売が基本のデパ地下でも、野菜の対面販売をしているお店には出会ったことはありません。それで「へぇ〜珍しい、市場か八百屋さんみたい…」と感じたわけです。
お仕事の邪魔をしないように遠くから拝見していると、野菜を品定めしているお客さんにアドバイスし、質問にもていねいに応じていて、お客さんも納得顔で購入していきます。人員を配置するのですから何がしかの経費はかかるはずですが、それよりも、お客さんの満足度を高めていくことによって得られるものを重視しているのでしょう。お店側として、消費者の反応や買い物の動向をダイレクトに把握できる、という効果にも期待している面もありそうです。メリットと経費のバランスをどうとるのかは難しい判断だと思いますが、「スーパーでは基本としていない対面販売に、あえて取り組んだ」ということ自体が、一つの付加価値を生み出しているような印象を受けました。
そういえば…。無類の蕎麦好きなため、あちこち行くたびに、お蕎麦屋さん探しをするのですが、その中で、薬味につかう「わさび」を生の姿のまま出し客におろしてもらう、というスタイルのお店に出会ったのです。蕎麦も絶品でしたが、このわさびの一件で「他の店とはちょっと違うぞ」というイメージがまず伝わってきて、その演出に感心してしまいました。聞いた話では、数種類の薬味を別々の小皿に分けて出し、自分の好みの薬味を好みの分量で足していきながら味わえるようにしたうどん屋さんもあるそうです。
どちらかというと、「客の手間をはぶいてあげる」ということがこれまでのサービス、付加価値だとする方向が多かったように思うのですが、こうしたお店は逆だったのですね。あえて「客に手間をかけてもらう」ことを付加価値として位置づけていく…、そうした姿勢がそれぞれのお店の蕎麦やうどんの商品価値を、他の店以上に大きくしていると感じました。
分野は違っていても、このような発想の仕方や視点の向け方は、農業において求められている「新たな付加価値」を探っていくときにも、何かのヒントになりそうな気がします。そんなふうにあれこれと考えさせてくれたお礼の意味も込めて、小松菜とナス、キャベツ1/2玉を買わせていただきました。