農★blog - 2009/03/12のエントリ
その年の「流行色」というものがあるのだそうです。「2009年春夏、レディースウエアの流行色は、ピンク・ベージュ・グリーン(青緑)が注目色なんですよぉ〜」。テレビに出てきた服飾評論家とおぼしき方が、そう力説されていました。ふだんからファッションとか美的センスとは縁遠い生活を送っているので、「流行色?、ふ〜ん」という感じで聞き流していたのですが、ふと「○○と▽▽が流行色って、誰がどうやって調べたのだろうか」「どのぐらい広まったら『流行した』と判断するのか」という疑問が…。あれこれ探ってみると、それは実に簡単な仕組みでした。
つまり、「流行色」というのは、世間に広まっているかどうかなどとは無関係。インターカラー(国際流行色委員会)という国際的に流行色を検討する場があり、そこで2年ほど前から検討を重ね、それを受けて社団法人日本流行色協会などの日本の機関が1年半前ぐらいに「○○年の流行色はこれだ!」と決める…、そういうプロセスになっていることが分かりました。ということは、世間に「自然に広まっている色」「広まりつつある色」などではなく、関連する業界が共同して「経営戦略として広めていくと決めた色」ということなんですね。
言われてみれば確かにそうです。でなければ、まだ冬なのに「09年春夏の流行色は…」などと、これからの季節の流行を話題にできるはずもないのですから。このことは、多くの女性の方、ファッション、デザインなどに関心のある方にとっては常識なのでしょう。でも、私のような中高年の者からすれば、「流行」という言葉を聞くと「何かの考え方や製品・言葉などが社会の中に広まっている、あるいは浸透しつつあるような状態」だと受け止めてしまいますから、どうしても落ち着かない感じが残ってしまいます。
ところで、「流行色」の一つに選ばれたグリーン(青緑)といえば、農家の人たちにとっては、流行とか何とかに関わらず常に身の周りで親しんでいる色だと思います。水田や畑、草地を舞台に、芽を出し枝葉を広げながら生育していく作物の緑。そして、流れる汗を拭いながら見上げると、そこに広がる大空の青…。もともと「緑」の語源は「芽出る」、木々や草が青々と茂るようすから認識されてきたものと言いますから、農業と深い結びつきがあっても何の不思議もないですよね。
農家の人たちだけではなく、多くの人にとってもグリーンは親しまれているようで、ある食品メーカーが実施した「最も食欲をそそる色」の調査で「緑」は見事に1位。400人中168人がこの色を選んだそうです。最近の日本人の健康志向を背景に、「新鮮な野菜を連想させる」というのが人気につながったと分析されています。また、もっと広い世界的な範囲での「人類の好きな色ランキング」によると、1位は約半数が選んだ青系列の色、2位は5人に1人が選んだ緑、という調査結果もあるそうで、09年の流行色のグリーン(青緑)が、ここでも揃って上位を占めています。
2009年春夏の流行色に「グリーン(青緑)」が選ばれたのは、エコロジーに対する関心が高まっている流れを踏まえて、「自然な循環」をイメージさせる色、という理由があったと伝えられています。せっかくそこまで目を向けてくれたのなら、もう一歩踏み込んで、青や緑と強く結びついている農業、自然とともに歩む産業である農業、そこにも正しい関心が向くように、今回の「流行色」をアピールしてほしい…。これまで知らなかった「流行色」のことが少しだけ分かってきた中で、そんな思いを強くしました。