農★blog - 2009/05/21のエントリ
「時代劇にはウソがいっぱい…」。そういうテーマの話を、どこかの学校の先生がテレビで力説していました。代表例として挙げられていたのが、「時代劇の暴れん坊将軍で、松平健さん演じる徳川吉宗が立派な白馬にまたがり海岸を走り抜けるシーン。この馬はサラブレッドですが、当時の日本にはまだいません」というもの。確かにサラブレッドは、18世紀にイギリスでアラブ馬やハンター種などを基に競走用に品種改良された馬で、日本に入ってきたのは明治以降のこと。時代考証的に言えば確かにそのとおりです。ただ、もともと時代劇自体ドキュメンタリーではなくて娯楽作品なのですから、そこまで厳密にするのがいいのかどうか、とも思うのですが。
昔からの日本産馬は、いまでは大変に数が少なく保護動物のような状態になっていて、撮影用に使用することは難しいと聞いたことがあります。また、サラブレッドと比べると体高も10〜20cmほど小さいようですから、松平健さんがそんなポニーみたいな馬に乗って登場すると、娯楽を飛び越えて「お笑い番組」に近くなってしまうでしょう。
時代劇を見ていて、サラブレッドが登場しても、それにあまり違和感を抱かない人のほうが多いのでは。それは、ふだん目にすることの多い「サラブレッド」が「馬」であるというイメージが、今の日本人の中に強くできあがっているためかも知れません。
お世話になっているJAさんの中に、そのサラブレッドの生産に取り組んでいるところがあります。そこの担当の方から、「日本のサラブレッドの生産数は、アメリカ、オーストラリア、アイルランドに次いで世界4位」「日本で生産されるサラブレッドの90〜95%が北海道、その北海道のうち日高産が約85%」など、これまで知らなかったことを教わりました。北海道は馬産地という感じはありましたが、これほどまでとは…。そして、日本での生産頭数が、1992年に12874頭であったものが、その後の社会事情の影響を受けて、2007年には7516頭まで減少していて、北海道の農業界にとっても深刻な状況にあることも話してくださいました。
サラブレッドは競走馬ですから、日本ではどうしても「競馬=ギャンブル」というイメージと一緒にとらえられることが多いと思いますが、その範囲だけではなく、競馬をスポーツや文化という面から見ていく、馬産に関わる経済の部分からも考えていく…、そうした捉え方が社会の中に少しずつでも広がっていくためのお手伝いを、私たちもしていかなければ、と考えています。