農★blog - 2009/02/18のエントリ
TVをBGMがわりにしながらパソコンで作業をしていると、妙な言葉が耳に飛び込んできました。「……そこで重要になってくるのが、とりあえず、です……」。一瞬、「とりあえずCMへ」の言い間違いかとも思ったのですが、ナレーションはどんどん続いていきます。目を画面に向けると、映っているのは災害現場で救急医療にあたる医師たちの姿。それで謎が解けました。「とりあえず」ではなく「トリアージ」、つまり、「大規模な災害で多数の傷病者が同時に発生したときに、救命の可能性の高さを基準に治療優先順位を決定する」というテーマのニュースだったわけです。
年齢のせいか、そうした聞き間違いがこのごろけっこうあります。例えば、「月光仮面は縮みだぁっ!」「次は、天気野放図」「うるせー美術館は鉄道の駅を改造してつくられた建物です」……。時空の「縮み」はアインシュタインの理論ですが、さすがにTVヒーローは縮んだりしないでしょう。「縮み」は「不死身」の間違い。また、いくら地球温暖化が深刻でも「野放図に天気が変わる」わけもなく、「次は、天気予報です」が正解。最後の例では、街中の駅だった場所なら騒音でうるさそうな気もしてきますが、実際は「オルセー美術館」、という具合です。
音と画面が一緒にある、話しの流れが分かっている、など、いくつかの情報を総合して受け止めていける場合はそうした聞き間違いも防げるのですが、切り離された情報だけが部分的に「ポツン」と伝わってくるケースでは、間違いが増えてしまいます。
先日、自宅近くの大手スーパーで買い物をしていて、ある情報掲示に目がとまりました。それがこちら。
「不足しがちな野菜・果物をもっと食べましょう」というメッセージと産地、値段が表示されています。でも、せっかく「もっと野菜を」とアピールするなら、この白菜、この長ネギを食べると、「不足しがちな」どんな栄養素が補われるのか、そこまでの情報も加えてくれると消費者にとってはありがたいのになあ、という感じを受けました。
別なコーナーに行くとこんなのが…。
「炒め物にどうぞ」という調理方法の情報が追加されています。ただ、なんだか単発な情報のような感じを受けます。より率直に言えば、お豆腐売り場の「寒い冬、湯豆腐にどうぞ」、果物コーナーでの「デザートに」などと一緒で、いわば「あいさつ言葉」「決まり文句」のような印象が伝わってきます。その程度では、消費者が必要としている「情報」にはならないのでは…?
せっかくなら、もう一歩踏み込んでほしいな〜。例えば写真のキャベツだったら、炒めた場合、生で刻んだ場合、茹でた場合、それぞれで「栄養素がこんなふうに変わってきます」とか、「○○産は、他の調理方法より炒めるのがおいしさを際立たせるコツです」とか、「△△と一緒だと味わいが増します」とか。
そういうふうに情報の総合力を高めていくことで、消費者にとっては「他にはない情報が得られて良かった」という満足感がそこに生まれてくるような気がするのです。実際に、珍しい野菜などにはその調理方法を細かく提案して販売しているスーパーや、「食べ頃にはまだ早いので○○日ぐらい寝かせてからどうぞ」などのように、販売側にとってはマイナスに思えるような情報までも丁寧に伝えようとしているスーパー、そうした取り組みを進めているお店もあるのですから。
トリアージの語源はフランス語の「triage(選別)」だそうです。「食の安全・安心」が大きな関心事になっている今の時代、食の分野においても「消費者にとって必要な情報は何か」についての「選別」や「優先順位の決定」が、「とりあえず」重要なテーマになってきているように思うのですが…。