農★blog - 2009/02/05のエントリ
東京には空がない…。そんなふうに嘆いたのは、高名な詩人の奥さんだったでしょうか。それにちなんで言うと、今年の冬、「北海道には雪がない」。
日本気象協会北海道支社によると、北海道内の1月の平均気温は氷点下2.1度。記録的暖冬だった1991年に次ぐ暖かさだったそうです。暖かいだけではなく積雪も少なく、豪雪地帯として知られる空知地方などでは例年の約4分の1ほど、札幌や旭川でも半分以下だと報じられています。下の写真は、今朝撮った札幌市内の道路の様子です。
こういう暖冬少雪に対して、「やっぱり地球温暖化のせい?」と心配される方、「春がすぐそこまで近づいているみたいで、心が和む」という方、いろいろおられることでしょう。確かに、仕事で道内各地に出かける私たちにとっても、車を走らせやすいのは大助かりだし、灯油代を少しでも節約できるのもありがたい。しかし、です。冬につきものの雪や寒さがなくては困る、そういう人たちも少なからずいるようです。
例えば、スキー場。雪不足でスキー客が伸びず、地域経済にも影響を及ぼしているとの報道がありました。また、冬の北海道観光を彩る各地のイベントでも、氷像や雪像の形が崩れる、雪の大型滑り台が中止になる、しばれ体験用のかまくらが雨で崩れる、などなど、かなりの打撃を受けていると伝えられています。
心配なのは冬の観光にとどまりません。いくつかのJAさんを訪問する中で、「冬の間にどれぐらい雪が降るか、積もるのか、それは春以降の農業用水と深く結びついている」ということを教えられました。つまり、暖冬で雪が降らないと融雪水も少なくなり、水田の代かき、田植えなどの需要期に農業用水が不足してしまうのだそうです。写真は、1月末、空知地方の稲作地帯を通ったときのもの。冬真っ盛りの時期なのに、秋の刈り取り跡がまだ見えるほどで、門外漢の私にも積雪の少なさが実感できました。
雪国・北海道ではこれまで、たくさんの雪のもたらす困難からいかにして生活を守るか、という「克雪」をキーワードとしていました。それに対してここ十年ぐらい、「雪は、太陽熱、風力につぐ第三の自然エネルギーである」との立場から、利用方法についての研究が進められ、具体的な取り組みも広がっています。そうした考え方を「利雪」と呼ぶそうです。
雪の持つエネルギーはけっこう大きなものらしく、そこに着目して、北海道の各地でさまざまな「利雪農業」の試みも進められていると聞きます。そうした取り組みが根付いていく中で、「雪国・北海道だからこそできる農業」という可能性も高まっていくのかも知れません。「ウチの地方には雪がない…」、そんなふうに北海道がうらやましがられるようになる日も遠くないはずです。
「雪は厄介なもの」「膨大な除雪費と手間をかけて捨てるもの」ではなく、「天の恵んでくれた新しいエネルギー」、そういう捉え方で雪と付き合っていくことが求められる時代なのでしょう。そうであるなら、やはり冬には冬らしい積雪があってほしいもの。どんなに雪が深くても必ず春は来るのですから…。