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農★blog - 500円の重さ

500円の重さ

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執筆 : 
aip 2009-2-10 17:44

 深刻な経済危機の対応策として「政府紙幣の発行も」、との報道がありました。通常は、日本銀行が紙幣を、政府が貨幣を発行していますが、仕組みとしては政府も紙幣を発行できるのだそうです。ただ、効果も想定される半面、リスクも大きいらしく、実現するかどうかは流動的なようです。別に紙幣じゃなくても、政府の発行している500円というのは、世界でもかなりの高額貨幣なので、それを有効に活用できないのだろうか、などと素人は考えてしまいます。
 その500円、額面としては高額であっても、使う人によってその重さや価値はいろいろでしょう。愛煙家だったら「500円じゃ2箱も買えない」と軽く感じるでしょうし、家計をあずかる立場なら「1日の食費をなんとか500円でも浮かせたい」と重く受け止めるかも知れません。私自身も「500円の重さ」を考えさせられる、いくつかの出来事に出会いました。

その1:
 仕事の調べもので、小さなマチの「郷土資料館」を訪れたときのこと。お昼も近いためか周りには誰もいません。「邪魔もなく、ゆっくり資料を探せそうだ」と入ろうとすると、ドアに鍵…。管理事務所で聞くと、「まあ、開館日だけどぉ…」「ふだんは客が来なくて、開けてないんだわ…」「見たいのなら開けるけど、ホントに見るのかい?」と、困り顔での対応です。とにかく開けてもらおうとすると、二の矢が飛んできました。この資料館、マチの野外レジャースペースの敷地内にあるため、「入館料は無料。しかし、エリアへの立ち入り料金が500円かかる」。用事は資料館だけであっても、です。仕方ありません。昼食のおにぎり代にと予定していたワンコインを支払って入館しました。
 館内はいたって「普通」、珍しい展示品はなく、使えそうな資料も見当たりません。それで最後にトイレを借りて帰ろうとドアを開けたのですが、ん? 何だか、床一面がざわざわしているような違和感…。電気をつけると、出迎えてくれたのは、数えるのも面倒なぐらいひしめきあったカメムシさんでした。これでは足を踏み入れられません。「いや〜、これが自慢の展示品ですか?」と面白くもないツッコミを入れながら、その施設を後にしました。
 ドアの鍵、料金の設定、管理人さんの対応、カメムシのお出迎え。これで500円…。私にとってそれらは、マチの「生の姿」を教えてくれるまたとない「資料」になりましたから、その授業料としてなら高くはなかったのですが。

その2:
 札幌の人口は約190万人。豪雪地帯にあってこれほど人口の多い都市は世界でも珍しいと言われています。そんな環境なので、自宅から車で5分ほどのところにスキー場があります。しかも住所は札幌市中央区…。もちろん、雪まつりの開かれる大通のような、街の真ん中ではありませんけれど。
 この10年ぐらい、スキー・スノーボード人口は大きく減少し、「リフト30〜40分待ち」などの頃が懐かしくなるほど、今ではどこのスキー場もやけに広々と感じます。そんな中で、自宅近くのそのスキー場は、小・中学生を対象に「放課後の時間の500円レッスンコース」を設けました。通常の10分の1ぐらいの料金なのに、指導者がついてレッスンを受けられるとあって、けっこうな生徒さんが利用し、夕方のゲレンデに少し活気が戻りつつあるといいます。
 スキー場としては、短期的な効果だけではなく、将来のスキー人口増に向けて今から若年層に働きかけていく、というところに本来の狙いを置いているようです。そうした将来への投資として、また、「遊休時間」の活用方法の一つとして、この500円はどのような効果をもたらしていくのでしょうか。

その3:
 昨年の秋、ある農村の産地直売所に出かけました。自慢の農産物があれこれと並び、多くの人が地元産の米、野菜などを買い求めていました。直売所の隣には、地元産以外の食品を並べた販売コーナーがあり、お客さんは自然にそちらにも流れていきます。
 一人の女性客が、500円という値札のついたある食品に手を伸ばしました。手にしていたのは、にんにくを袋詰めにしたもの。表から裏までをじっくりと眺め、突然、仲間の一人に向かって声をかけます。「こりゃあかんで。いまどき中国産なんかを並べているようじゃ、直売の野菜も信用でけへんのとちゃう?」。中国産の輸入食品がいろいろと話題になっていた時期で、大きな声が周りにも届いたせいか、販売コーナーや直売所から人並みがスーっと消えていきました。
 運営側としては、安全を確認して販売していたとは思います。でもそうした情報提供が充分ではなかったためか、わずか500円で、それもその直売所の主力ではない商品のために、直売所やそこの農産物全体のイメージが、マイナスの方向で受け止められてしまう…。そうした怖さを、この関西からのお客さんが教えてくれたのです。

 

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